介護士として生きていく。

妙ちゃんが介護?と言われた私、勤続20年です

立山連峰を臨む抜群のロケーションにある社会福祉法人能登福祉会・あっとほーむコモド(七尾市)。ここで副主任を務める島田妙子(しまだ・たえこ)さん(50)。ピンク色の制服がよく似合う。お酒とペットへの愛を語ると止まらない。こんな人が上司だったら毎日楽しいだろうなと思う。

富山県出身の島田さん。自身を「熱い情熱を持って介護の職に就いたというタイプではありません」という。20代半ばまで、エステティシャン、宝石店での販売の仕事に就いていた。その後、結婚を機に七尾へ。ちょうど、現在の勤務先の立ち上げのタイミングで、多数の職員を募集していたことから「応募してみた」のだという。
「介護職には地味な仕事というイメージを持っている程度で、やってみて嫌だったら辞めればいいかと軽い気持ちで就職しました」。この選択に友人や家族は驚いた。「『あなたに介護職が務まるの?』とさんざん言われました。でも介護の仕事も見方によっては接客業だし、経験してきた仕事と繋がっていると思って、周りほどは心配していなかったんですけどね」と振り返る。

知識ゼロ・経験ゼロで飛び込んだ介護の世界。早々に、介助中の人が自覚なく排泄を始めてしまうという洗礼を受けた。辛いと感じそうな体験も、島田さんにとっては「嫌悪感とか辞めてしまいたいではなくて『人間ってこんなんなんや!』っていう、新鮮な気持ちが駆け巡った」瞬間だったという。物事をありのままに、シンプルに受け止める感性によって島田さんはしなやかに介護の世界に馴染んでいく。気が付けば友人に介護の仕事を勧めるようになっていた。

早番、遅番、夜勤の3交代制の勤務シフトについても「確かに9時から17時勤務のような一般的な時間帯で働く仕事にあこがれたこともありました。でも山から上る朝日が見られたのは夜勤のおかげなんですよね」と受け止めている。事業所から見える立山連峰を照らす朝日を撮影して、職場のみんなで回覧するのが恒例なのだそう。

副主任として、自分が思い描く「気軽に声を掛け合って気持ちよく働ける環境づくり」に奮闘している。今ではずいぶん慣れたけれども、若手職員と上司の間に立って割り切れない思いを感じる時も。そんな島田さんに欠かせない2つのアイテムがある。
一つはズバリお酒で、アルコール度数の高いものが好み。「同じ職場で働く8歳年下の旦那さんよりもお酒は強いです。飲みが浅いと眠りも浅いのでしっかり飲んでいます」と、今は濃いめのハイボールにハマっているそう。
もう一つがオスのトイプードル「プティ(2歳)」と「ロイ(8か月)」。犬との暮らしは旦那さんとの長年の夢だった。「2匹の性格が真逆で振り回されっぱなしですが、無償の愛をもらっていますね。うちの子が一番かわいいと信じて疑わない親バカです」との言葉どおり、スマートフォンには2匹のベストショットがずらりと並ぶ。「仕事が終わって家事もお風呂も終えて、旦那さんといっしょに犬をかわいがりながらお酒を飲んで。こんな介護職員でいいんでしょうか」と茶目っ気たっぷりに笑う。

かつて「介護の仕事なんて無理なんじゃない?」と心配された。理不尽な上司に泣かされたこともあった。でも気が付けば20年以上が経ち、今では、ささやかだけれど自分なりの「技」があるという。「例えば、認知症の人に同じことを何度も聞かれるとイライラしてしまうことがあります。でも、やはり人間ですからイラつくこと自体は否定しない。肝心なのは、イライラの取り扱い方、感情をご本人にぶつけずに済ませることだと思います。ほかの介護者に対応を変わってもらってクールダウンするとか、笑い話にして明るく発散するとか。20年間でそんなことがずいぶん上手になったんですよ」。