介護士として、生きていく

断言。仕事のストレスはないです

介護専門員として社会福祉法人福寿会・鶴来ふくまるハウス(白山市)に勤務する、林下渉(はやしした・わたる)さん(41)。野菜作りと音楽を楽しむ2児の父。仕事を始めて4年とは思えない落ち着いた風貌。紆余曲折を経て、今、鶴来の地でしっかりと根を張っている。

愛知県名古屋市出身の林下さん。工業高校を卒業後、自衛隊で長く過ごし、奥さんの出身地の石川へ。その後も配達の仕事などを行い福祉職とは縁遠い生活を送っていたという。「ただ、仕事相手に『お年寄りにかわいがられるタイプじゃない?介護の仕事とか向いていそう』と言われたことがありました。その時はあまりピンとこなくて、自分はそんな風に見えるんだな、程度にしか思わなかったのですが」と振り返る。
転職を重ねて営業職に就いた時のこと。専門的な仕事を任され次第に体も精神も追い込まれていく林下さんを見かねて、奥さんが「無理なく長く続けられる仕事のほうがいいね」と声をかけたという。「それなら介護職なのかなと。向いているんじゃないかって言われたのもなんとなく記憶にありましたし」。
その後、ハローワークを通じて実務者研修を受けて、現在の事業所に就職。30代半ばを超えての転身も「何ができるかが大事で、年齢を問われるような仕事ではないと思う」といたって前向きだ。

着実に経験を積んで、去年、介護福祉士の資格をとった。プライベートでは近所に畑を借りて、野菜作りにデビューしたという。「虫が出るのも、一気に野菜がなって収穫に追われるのも全部がむちくちゃ楽しいです。野菜の花ってあまり見たことがなくってそういうのにもいちいち感動しています」と土に触れる楽しみを満喫している。ことしは畑の面積を倍にする計画で、コストを抑えるためにも肥料を使わない農法にチャレンジするという。事業所のテラスのプランターでも野菜を育てていて、利用者さんたちから「様々に・熱く」アドバイスをもらっているのだとか。「農業に携わってきた方が多くて、肥料の種類や気温対策だとか、すごくみなさん話したがるし、世話をしたがる。利用者さんたちが気軽に野菜作りを楽しめるような仕組みを作れたらいいなと思っています」。

さらに林下さんの人生を彩るのが音楽だ。「特に太鼓は自衛隊のチームに所属したのがはじまりで、なんだかんだとずっと続けています。太鼓がきっかけで笛も吹くようになりました」と話す。現在は、地元の子どもたちの太鼓チームの活動を手伝って、地域の伝統を守っている。「仕事が終わって畑に行って一汗かいて。家に帰ってから、ちょっとギター弾きながら歌ったり、太鼓叩いたりする。とても充実していると思いますが欲を言えば新しい太鼓が欲しいです。もう6個も持っているので、嫁さんから絶対買うなと言われているんですけど」と笑う。そんな奥さんとの出会いも実はウクレレがきっかけだそうで、音楽との深い縁を感じさせる人だ。

2児の父でもある林下さんにとって、「介護の仕事は家事の延長線上にある」のだそう。「もちろん、はじめは驚くこともありました。でも、排泄の処理や食事や入浴の介助なんかは基本的に子どもの世話とそんなに変わらないな、家でやっているのと同じだなと思ったんです」と淡々と語る。
だから、毎日「仕事」をしているという感覚がない。「もちろん、利用者さんを自分の家族だとは思ってはいませんが、事業所は事業所で、もうひとつの自分の家という感じ。

きょうも仕事が終わったって~っていうサラリーマン的な感覚がまるでありません。だからストレスはないんですよね」。